授乳期のどの時期にあっても、悩まされることが多いのが「乳首の痛み」
乳頭の根本に亀裂ができたり、乳頭の先が擦れて赤くなったり、水疱ができたり血豆ができたり、傷の種類は様々です。
乳首の痛みで顔をゆがめながら授乳していたり、痛みのために授乳の時間が辛いと感じている人もいます。
今までママと赤ちゃんの授乳の様子をみてきて思うのは、「ママの授乳のときの姿勢や赤ちゃんのおっぱいの含み方を見直すことで乳首の痛みは随分楽になる」ということ。
この記事では、授乳の時間が苦痛ではなく癒しの時間となるように、乳首の傷を予防できる授乳の方法や工夫について解説していきます。
乳首が傷になるのはなぜ?とその対処方法
授乳を始めて間もない時期(産後1週間くらい)に乳頭の痛みを伴うことは一般的なことだと言われています。
まず乳首が「吸われる」という刺激に慣れていないですよね。
おっぱいを含ませてから20〜30秒程度痛みを感じることは特に問題ありません。
適切に授乳をすることが出来ていたら、次第に授乳にも慣れ痛みを感じることはなくなっていきます。
乳首の痛みが1週間以上続くとか、授乳が苦痛と感じるほどの痛みの場合には改善が必要です。
以下に乳首が傷になるきっかけをいくつかあげています。
おっぱいの含み方が浅い
授乳にまだ慣れない時期は、抱き方が不安定であったり、おっぱいを含ませるタイミングをつかむのが難しかったりして、おっぱいの含み方が浅いことが多くあります。
乳頭がつぶされて飲んでいるときや、引っ張られて飲んでいるときは痛みを感じやすく、改善されないまま授乳をしていると傷になります。
授乳する前の乳首と授乳した後の乳首はまんまるかな?
授乳した後の乳首がつぶれているようであれば、授乳の姿勢やおっぱいの含ませ方を見直す必要があります。
おっぱいを飲んでいるときの「チュチュ音」やほっぺたの凹みも、おっぱいの含みが浅いサインのひとつです。
乳首を外すときに引っ張られている
赤ちゃんが母乳を飲んでいるとき、満足すると自分からおっぱいを離す仕草が見られます。
赤ちゃんが吸っているときに無理におっぱいから離そうとすると、乳首か引っ張られて傷になることもあります。
赤ちゃんの口角から指を入れ、陰圧をかけてから外すようにすると乳首が引っ張られずにおっぱいから離すことが出来ます。
搾乳器で乳首が引っ張られている
搾乳器のサイズは合っているかな?
圧が強すぎることはないかな?
搾乳器の搾乳口の大きさが小さすぎたり大きすぎたりしないように、自分の乳房や乳首のサイズに合ったものを選ぶようにしましょう。
搾乳器の圧は必要以上に強い圧をかけてしまうと、乳首が引っ張られてしまいます。搾乳中に痛みを生じることがあれば、圧の強さを調整しましょう。
服や下着で擦れている
ブラジャーのサイズがきつくて乳頭を圧迫していたり、服で擦れていたりする場合やブラジャーの素材が化学繊維である場合も乳頭に傷ができるきっかけとなります。
ゆったりとしたブラジャーや素材が肌にやさしいものを選ぶようにしましょう。
乳首を噛まれる
歯が生える時期の授乳は、乳首を噛まれることの恐怖を抱えている人もいます。
「乳首を噛まれる」ことは遊びのみのひとつで、おっぱいをやめるサインではありません。
赤ちゃんがおっぱいを適切に含んで飲んでいる場合には、歯茎よりも舌が前に出ているため、噛まれることはありません。
ただ、おっぱいを含んでいるだけのときは乳首を噛んでしまうことがあるかもしれません。
舌を引っ込める仕草があるときには、予防的におっぱいから離すようにしてみましょう。
「痛っ!!」などと大きくリアクションをとると、その反応を面白がって繰り返し噛むこともあります。
噛まれたときは、大きなリアクションをとることはせずにクールにそっと乳首を赤ちゃんから外すようにしましょう。
乳首が傷にならないための予防方法
適切な授乳の姿勢とおっぱいの含み方ができる
まずは妊娠中に、母乳育児について学び適切な授乳姿勢とおっぱいの含み方を知ることがとっても大切です。
そうすることで、出産後すぐから痛みなく快適に授乳することが出来るようになり、乳頭の傷の予防にもなります。
乳頭に傷ができる前には、必ず授乳時に乳首の痛みを伴っています。
痛みを我慢したまま授乳を続けるのではなく、痛みを感じた時点でおっぱいの含み直しをすることが大切です。
ここでは簡単に授乳姿勢とおっぱいの含み方のポイントをお伝えします。
まずはママと赤ちゃんがリラックスしていることが大切です。
(ママの姿勢がつらくない&赤ちゃんが泣いていない)
- 赤ちゃんの身体全体がママの方を向いていて互いの身体が密着している
- 赤ちゃんの耳、肩、腰が一直線で身体がねじれていない
- おっぱいと赤ちゃんの顔は向き合っている
- 赤ちゃんの身体はママの腕全体で支えられている
- 赤ちゃんの鼻や鼻筋辺りと乳首が向き合うようにポジションをとる
- 赤ちゃんのお口に乳首をねじ入れるのではなく、口が開くのを待つ
- 赤ちゃんがお口を開けたら、赤ちゃんの身体を引き寄せる
赤ちゃんがおっぱいを飲んでいる姿は、乳首だけを「チューチュー」とストローを吸う仕草ではなく、おっきなハンバーガーを口いっぱいに含むような感じでおっぱいを「アムアム」と飲んでいます。
乳頭の傷の予防のために効果的でないこと
乳頭を鍛える
ずいぶん昔の話にはなりますが、わたしが助産師になりたての頃は、「乳頭を鍛えるためにおっぱいを出して日光浴をさせましょう」というような指導を母親学級でしている時代でしたが、根拠のある話しではなく、必要ありません。
そして、妊娠中に乳首を引っ張ったりつねったりするようなマッサージをするして母乳育児に備える施設もあるかもしれませんが、これも特に効果がないと言われています。
乳頭にクリームを塗る
乳頭にクリームを塗ることは、モントゴメリー腺(乳輪にあるポツポツとしたもの)を塞いでしまう可能性があり、あまりお勧めできません。
※モントゴメリー腺からは分泌物が出ており、ママのおっぱいの匂いで赤ちゃんの哺乳意欲を刺激しています。
また、乳頭の傷を予防したり、傷を治す作用があったり、感染予防効果があったりします。
授乳回数や授乳時間を制限すること
授乳回数や授乳時間の制限は、母乳が充分に飲めなかったり、飲み残しが起きることで、赤ちゃんの体重増加や母乳分泌に影響を与えてしまいます。
授乳回数や授乳時間を制限することよりも大切なことは、乳頭を傷つけないようにすることです。
適切な授乳姿勢がとれているか、おっぱいの含み方はどうか、などを再度見直しましょう。
乳首が傷になったときの対処方法
授乳姿勢とおっぱいの含み方の見直し
何度も何度も何度もお伝えしてきていますが、やっぱり大切なことは「授乳姿勢とおっぱいの含み方」なんです。
自分ではなかなかコツがつかめないなぁ、という場合には、助産師さんにサポートしてもらいながら見直してみましょう。
乳房と傷の保清と保湿
乳頭に傷があると、そこからの感染で乳腺炎になることもあります。授乳前や搾乳前には手洗いをしましょう。
乳頭痛がある場合には、明らかな効果はないとはされていますが、ラノリンなどの赤ちゃんが口に含んでも安全なクリームであれば塗布することも可能です。
搾乳して母乳を与える
痛みが強く授乳をすることが苦痛と感じる場合には、直接母乳をお休みして搾乳で母乳を与えましょう。
搾乳をせずに授乳を飛ばしてしまうと、母乳がおっぱいに貯まってしまうので、乳腺炎を引き起こすきっかけとなることがあります。
【ニップルシールドの使用について】
乳頭に傷ができたときに、ニップルシールド(乳頭保護器)を勧められることがあると思います。ニップルシールドを使うことは一時しのぎでしかなく、解決には向かいません。サイズが合っていない場合には傷を悪化させてしまうことがあります。
まとめ
今回の記事では、授乳期に多い悩みのひとつである「乳首の痛み」について解説してきました。
妊娠中から母乳育児について学んでおくことや、授乳が始まったときに適切な授乳姿勢とおっぱいの含み方ができることは、乳頭の痛みを予防するためにはとても効果的なことです。
痛みがあることは仕方がないとか我慢するものではないため、痛みを感じたら早めに対処するようにしましょう。
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